建築デザイナーブログ

アラスカのアンカレジの家

色々な国・都市での居住や滞在を思い出しながら、リストにまとめてみましたが、今まで世界93都市に行ったことが分かり、さて次はどの国、都市の建築ついて書こうか?と思い、以前書いていたブログを見直して写真がある方が良いと思い、アラスカのアンカレジの家について、今回は書こうと思います。

アラスカ州のアンカレジの家

到着した2007年5月の終わりに、散策をしたときに見つけた工事現場です。
大工さんが屋根に垂木を打ち付けていたので、下から声をかけて見学したいと告げると、周囲からの見学だったら良いと建設会社の社長と弟さんが言ってくださり、忙しそうな中、質問に答えてくれました。見るからに新しいデザインで、部屋の配置が変わっているので「アパートメントですか?」と尋ねると「そうだよ。デザイナーが入っているんだ」と。
アラスカのアンカレジも最近はこういうモダンなデザインの依頼が時々あると言うことでした。
構造は一部鉄骨梁とツーバイ材で、床・壁のパネルで強度を出しています。雨に濡れた構造用パネル合板は強度が落ちるのでは?と心配になりましたが、すぐに防水紙・断熱材
の施工に入るから問題ないとの事でした。こういうところは、日本人と違って細かくないですね。

アラスカ州のアンカレジの家

一階はガレージ?ピロティ(住居部分はなく車や収納する空間)で、2階から居住スペースとなっていました。そして写真にあるように黒い防水紙を張ってから断熱材(ブルーのウレタンパネル)厚み50mmを外側に張っていました。雪を考慮し、いわゆる外断熱ですね。イギリスでは内断熱でした。
断熱材の外側の施工は、どうするの?と尋ねたら「モルタルを塗ってその上にスタッコフレックスで仕上げるんだよ」との事でした。
まさか、この断熱材に直にモルタルとはいかないので、クラック防止ネットを張り、それにモルタルを塗り込み、仕上げにスタッコフレックス(仕上げ材ですが、日本でも一時期多くの建設会社、工務店が使っていましたが、クラック(ひび割れ)の問題が多く出て、あまり使用しなくなりました。)

さて、ここで疑問が生まれた私です。
ノルウェーでは空気の層と無垢材の外壁で断熱性を上げていましたが、アンカレジでは、冬は-5℃・・・時はー10℃くらいになるらしいのですが、こんな断熱材だけでいいのかな?と。
積雪は冬(10月頃から3月頃まで)25mm~250mm、日照時間は一番短い月で4,5~5時間くらいですから、暗くて寒い冬を過ごさなければならないのに、、、
建設会社の社長さんに尋ねると「これで問題ないよ」と。
室内のセントラルヒーティングのシステムは、日本よりはるかに良いので、きっとそういう事なんだろうと思いました。
結露の問題や、床下断熱などについても尋ねたかったのですが、仕事の邪魔になるなと遠慮しました。
現地で建築家をしている方を紹介してもらう予定だったので、今尋ねなくてもいかな?と思いましたが、結局はスケジュールが合わず会えませんでした。
では、一般的な住宅の外観をご紹介します。おとぎの国の家のように可愛いかったです。ダウンタウンに建っていた家です。

アラスカ州のアンカレジの家

ダウンタウンにある家は、みんな小さかったので、ちょっと驚きました。土地価格が高いそうです。
玄関までは緩いスロープがある家が多かったのは、古くから住んでいる方が多いからだと思います。
このデザインは、玄関の風除室のポーチの屋根と小窓、横に見えるリビングの大きな窓とのアシンメトリーなデザインが妻側に可愛く配置されていて、可愛さを増していると思いました。
大きな樹木が外観に生えるように植えてあり、黄色の外壁がより一層物語感をあげていて、木の枝が家の一部を覆っていると、何もないよりは雰囲気が一気にあがると思いませんか?

次にご紹介する家の外観デザインは、輸入住宅がお好きな方には抑えた可愛らしさを感じると思います。
屋根、外壁は白、窓枠やドア枠、そしてコーナーの役物が淡いグレー。ここで光るのは白い屋根だと思いませんか?但し、白の屋根材は日本では、数年で汚れが目立ってしまうと思います。
でも、この色合わせでしたらアメリカの大きな家によく見られます。この家のアクセントは淡いグレーではなく、風除室の玄関ドアも赤と白のラインと、12寸くらいの勾配のとんがり屋根の破風の赤のラインと、ドアに向かう手摺と郵便受けの脚の赤です。 この玄関ドアは、エジンバラの我が家のドアと同じです。ドアを挟んで両窓についている窓の上部にある窓飾りは、イギリスの我が家リバプールにある窓飾りと同じですね。きっと同じ時代に取り付けたのだと思います。
ラップサイディングの外壁は、アーリーアメリカンスタイルの家に使われていますね。

アラスカ州のアンカレジの家

アラスカ州のアンカレジの家

アラスカ州のアンカレジの家

日本には引違い窓かFIXしかなったころに、色々な窓の形や役割によって使い分ける輸入住宅の窓が入りやはりちょっと革命が起きた感じでした。 FIX(はめ殺し窓)とケースメントの連窓窓なども、今では、一般的になりました。また窓に断熱性を求めるのも、住宅建築の常識となりました。
私は、オーニング窓(横滑り出し窓)はキッチンの背面キャビネットのベースと吊戸棚の間に設けたり、ダブルハング窓(上げ下げ窓)はガラス窓部が邪魔にならない窓なので、トイレの窓に設けます。
日本では、高温多湿なので、トイレは窓の半分を開けたままで使えるから、とても良いと思います。
また、ケースメント窓(縦辷り窓)などは、日本の窓の大半を占めている引違窓のように、光は窓の大きさ分入ってきますが、風は半分入らないというデメリットがなく、外壁面に間隔をあけ配置すると、(上の写真のように)風がその大きさ分入ってきますし、また光の導入も分散できるので、全体的に部屋が明るくなります。
窓の間に構造用壁も設けることができ、バランスの良い、ねじれが生じにくい家造りができます。
輸入住宅は床、壁、天井の構造用パネルで強度計算をしますので、窓と窓の間に壁があることは、強度的な要素が含まれています。
唯、日本は地震国なので、それだけでは足らないと思っていますので、私のお勧めとしては、在来工法とパネル工法とそして空気の層を設ける通気工法、さらに制震ダンパーを取り入れることを現在はご提案しています。窓に表情を持たすることができるデザイン性豊かな輸入窓は、断熱性能も高いので、絶対的にお勧めです。

では、アンカレジで滞在した家の室内をご紹介します。 ダイニングテーブル大とコーヒーテーブル、コーナーの窓はとっても大きくて、樹木を見ながらの生活です。
一般的に人は自然を感じながら生きる空間があると、心が安らぐのだろうと思います。ですから、敷地の状況を見て借景は重要だと思います。また毎回光の入り方、風の通り方は一番に考慮します。

アラスカ州のアンカレジの家

ダイニングとキッチンの間には、キャビネットがあり、ワインセラーがインされています。
面材は木材が豊富なアラスカですので、マホガニーだったと思います。プッシュ型のピポットヒンジは、シンプルな面材のデザインになり、すっきりしています。
スペースに余裕があってダイニングに、こういうキャビネットがあると収納はもちろん、ホームバーのシンクと水栓も付けることができ便利ですよね。

アラスカ州のアンカレジの家

イギリスやアメリカの住宅にあるメインのリビングルームではなく、もう一つの家族がくつろぐ部屋はファミリールームと言いますが、この緑色の籐の家具でアジアンテイストで一応まとめらたファミリールームは、16年前の滞在中も、かなりの違和感がありました。 部屋角のガス式暖炉のマントルピース(暖炉周りの装飾)との違和感がありすぎるからだと思いました。多分アジアのどこかに旅行に行き籐の家具が気にいったかな?と思いましたが、家具の色・テイストを揃えても籐の軽さと暖炉の重さや木製のマントルピースが合わないと思います。もし籐の家具でまとめたかったら、コンザバトリー(住居スペースと庭をつなぐ木材とガラスで作られた温室のような部屋)に置くか、暖炉のない部屋や、逆に石張りの内装などでしたら映えると思います。改善策として、ご自身でもできる事として、マントルピースの色を白に塗り替えるのが予算を抑えてできることだと思います。

そして、もう一つは、籐の棚のサイズが窓に被っていることですね。多分TVを置く為のサイズだと思いますが、せっかくのマントルピースの上部の棚部分の空間の良さを奪っています。
この緑色の籐の棚がなかったら、もうちょっと違和感を感じずに落ち着いたと思います。ついつい私たちは、やってしまいがちになりますが、必要性と違和感を考慮して、インテリアを考
える習慣を頭の隅っこに置いておくことも必要だと思っています。

アラスカ州のアンカレジの家

次は、寝室です。この寝室での提案をさせていただきます。
まず、カーテンとアイアンのレールを基本に考え、ベッドカバーは白のリネン(カーテンがリネン)かマントルピースの重厚感、クラシックなデザインから白に1本薄いグリーンのラインがベッドへッド側についているカバーを想像してください。そして籐の椅子にも白のクッションを置く。枕もカーテンのデザインと同じようにシンプルなデザインで白、ベッドの上にはカーテンと同じ素材で作ったクッションを二つ置くだけで、黒のアイアンの天蓋フレームが映えると思いませんか?
そして、籐の椅子とテーブルをマントルピースと同じ色に塗ったら、まとまりと落ち着きを感じると思います。DIYでできることは意外にあると思います。大それた家具創りのようなDIYではなくとも、籐の家具の色を自分で塗ることからはじめてもよいと思います。
まとまりがないなと感じたら色を合わせる事も一つの方法です。きっとこのベッドカバーも気にいって買われたんだと思います。でも買う前に、その色、素材が本当に違和感なくまとまるのかを、考えてから、購入を決めてみてください。きっと素敵になっていくと思います。

アラスカ州のアンカレジの家

これは、16,7年前の一般的なアメリカ家庭のベッドルームのコーディネートですね。ゲストルームとして40代から50代くらいの方がのコーディネートされたんだと思います。
ベッドヘッドの金色のフレームやサイドテーブルに置かれたスタンドのデザインから、想像できます。

アラスカ州のアンカレジの家
アラスカ州のアンカレジの家

右の洗面台は、ゲストハウスにしては小さな物でした。朝のシャワー習慣のある国の一般住宅では、こういう洗面台が多いのかも?と思いました。
私は、サブの洗面台として、こういうスタイルを取り入れています。
最後に、これはダウンタウンにあったレストランの内部写真ですが、屋根の梁はトラス梁に、緩い曲線を描いた棟。薪をくべる大きな暖炉があり、煙突の周りの木材がそのまま使われていてススで汚れていました。日本だときっと耐火被覆の要求が建築基準法上されるだろうと思いながら見上げていました。
でも、このトラス梁で体育館のようなかなりの大空間を生んでいました。長い冬の間、みんなで集まりワイワイと食事をしたりお喋りをしたりする。この大きなレストランは、ラウンドマークとして、地元の人達に愛され、食事のみならず、ミーティングの場所として存在していました。
大きな会議があり、その後の二次会で夕食をいただきましたが、このレストランでいただいたクラムチャウダーは、絶品でした。 帰国後は、あの味が食べたくなり時々作って食べていますが、毎回今一つだなと思います。

アラスカ州のアンカレジの家
もう一つ、ホエールウォッチングをした時に大型船のデッキから見つけた自然の中で生きているラッコの写真を公開します。意外に大きくて90cmくらいはあった気がしました。癒された瞬間です。
アラスカ州のアンカレジの家

★コンサバトリーについて
冬の日照時間の短いイギリスやアメリカ北部では、光がたくさん差し込む部屋は、生活の中でとても重要で、18世紀ころから貴族や豪商などが色々な植物を育てるために造られた温室が始まりでした。それがやがて部屋からつながるもう一つの光がいっぱいの部屋として、一般住宅にも浸透しました。コンサバトリーは温室からガーデンハウスとして、その空間で食事をしたり、お茶を楽しむ部屋として素敵な空間になりました。

アラスカ州のアンカレジの家

アラスカ州のアンカレジの家

アラスカ州のアンカレジの家

2011年に手掛けたF様邸のリノベーション工事は、日本製のサンルームを設置しました。

アラスカ州のアンカレジの家

ワンちゃんが7匹いるということで、カーテンの裾は、おしっこ対応です。屋根は電動のシェードを設け、日本ではエアコンが必須ですから、エアコンを取り付けました。次の写真は、既存のリビングルームからのアクセスです。

アラスカ州のアンカレジの家
アラスカ州のアンカレジの家

上記写真の左側はサンルーム・右側は屋根付きテラスです。
お友達を招いてティータイム。余裕を感じていただける空間となりました。

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