新しくブログ開設いたしました。 これから、世界約60か国、都市に滞在した際に見たり、考えたことなどを、建築に携わる者として、書いていけたらと思っています。
まず一番最初に住んだスコットランドの歴史的な街、エジンバラの我が家をご紹介します。
閑静なちょっと高級感のある住宅街で前面の道路幅は8mに歩道はさらに両側に1mくらいありましたから、とっても気持ちが良い解放感がありました。 玄関ドアを開けると真正面にはホリールードパークの丘が見えてエジンバラの中心の市街地の建物のような300年、600年の建物とは全く違った環境でした。
この辺りはエジンバラステーションまで車で10~15分くらいの郊外です。Kirkhillという通りの名前は、スコットランド語で「大きな丘」という意味だそうで、中世の教会の跡地に
建てられたそうですが、これらの家自体は約80年前に建てられた比較的に新しいデザインの家です。ほとんどの家は、道路面側にフロントヤードが奥行5mくらいあり、そこから家が建ち並らび、家の配置がきれいに揃い、さらに窓の位置、玄関の位置も真ん中にあって、それも揃っていましたので、美しいと思いました。日本の家のデザインと一番違うのは、窓などの縦横のラインや配置が揃っていることです。
バックヤードは、ダイニングキッチンから庭に出て、20mくらい奥まで庭でした。
窓の位置がシンメトリーに近い外観で、道路からは、幅2.4mの大きな窓を通して暖炉のあるリビングルームとその奥のダイニングまで見えました。 我が家は右側がベッドルームで、キングサイズのベッドがあり、隣のベッドルームには日本サイズで言うとセミダブルがツインで置かれていましたが、空間として余裕がありました。セントラルヒーティングで床は毛足の長い絨毯でしたが、子供たちが友達と駆け回っても音がせず、唯一無垢材の階段の上がり降りで、音がしました。2階は思ったより天井の高さが低かったです。
このエリアは特に建物の高さ制限が厳しかったです。
外から見て小さいと思っていた家は、236㎡くらいあり、1,2階で72、73坪くらいでした。
リビングやダイニングのドアのデザインは、このデザイン。モールディングが上部、両サイドについていて、このドアが南側のキッチン、そしてダイニングを通って光と風を北側のリビングまで届けてくれました。モールティングがあるドアは、単調な壁に伝統的なデザインとしてアクセントを与えていると思いました。
日本では、考えられない北側のリビングルームですが、リビングの大きな窓からも明るさが届き、暖炉を囲み落ち着いた雰囲気がありました。道路を挟んで北側に並ぶ家々は南側リビング・玄関・寝室となり、キッチンが北になります。日本のように、リビングは一番良い方位、南側でとの考え方やこだわりがなく、ある条件の中でいかに光を取り入れるかを考えているからだと思います。エジンバラの北緯も影響しているのかもしれないと思いました。
冬の日照時間が短いスコットランドでは、光を取り込むために天窓をつけることが多いです。
カフェのテラス席や住宅にもよく使われています。VELUX社製がかなりのシェアを占めています。私の作品の中の、イタリアの家・スペインの家CASA・パリの家等にも取り入れています。
冬のエジンバラは風が強く最高気温が5°くらいでしたので、外壁の厚さと窓と暖房システムはとても重要で、1994年ころに住んでいましたが、窓のサッシは、2重、3重硝子で、結露を見たことがありませんでした。
サッシは外部アルミ、内部は木製枠でかなりの重厚感と断熱性がありました。その頃の日本は、まだ一般的ではなかったペアガラスやトリプルガラスの断熱性能の高さを実感しました。
テラスドア:キッチンからバックヤードへ出るサッシのハンドルはゴールドでした。今では日本でも一般的になりましたが、サッシや室内ドアの色は統一されていて、清潔感とまとまりを感じます。リバプールの家は樹脂サッシでしたが、それについては次の機会にお話ししたいと思います。
木製の階段は、100年以上過ぎても色を塗り替えながら、存在し続けますのでエジンバラの家は約80年なので新しく、リバプールの家も、何層にも塗ってきた塗料の厚みを手で触ると感じることができました。
一般的な戸建て住宅ははPOST-TO-POSTのデザインが多く、住みながら、皆さん好きな色に変えていました。伝統的な輸入階段のデザインですが、日本では、Fitts社のヘム材・オーク材で提供しています。バラスターは黒のアイアンもあり、市街地中心の歴史的に古い300年前、600年前の建物には、アイアンのバラスターが変わらぬ存在感を放っていました。
階段一つでも塗装を繰り返されながらも生き続けてきた重さと歴史を感じました。知り合いの家を訪問した時に、一瞬中世の貴婦人が見える瞬間がありました。(^^)
キッチンは、オークの面材でワークトップは石目の大理石・冷蔵庫・オーブン・レンジはすべてビルトインですっきり収まり洗濯機&乾燥機もキッチンにビルトインでした。
イギリスでは、洗濯機&乾燥機はキッチンに設置することが多いですが、家事動線を考えての事だと思います。
アメリカのようなランドリールームが少ないのは、国土が小さいからだと思いました。コンロは4口でした。扉のデザインは、額縁があるちょっとクラッシックなデザインで乳白色、取手はゴールドでした。扉のデザインは左のメリットキッチンと同じでした。写真を撮ってないので、カタログからの抜粋となります。
さて、エジンバラの私の家は、石積で外壁の仕上げはモルタルに当時は1cmくらいの粒の石吹付でした。
リフォームの現場を覗き見した時に、グラスウール断熱材の厚さに驚きましたが、我が家も30cm以上のグラスウール、ロックウールで包まれているから暖かいんだと思いました。約3倍から5倍の厚さですね。
内側の壁は、スタッド(小さな角材)を立て、内側に石膏ボードを張りクロスや塗装仕上げです。
屋根下地は、木材で組み古い家は天然スレート葺きですが、現在はシングル葺きがほとんどです。
シングル葺きは、私もよくご提案しますが、素材に柔軟性があり曲線の施工もでき、石が吹き付けられた素材ですので味があり、コロニアル屋根は割れますが、割れない、割れにくいのが特徴です。
壁の厚さは5~60cm以上が一般的ですが、新築の壁の厚みは、イギリスもアメリカ同様薄かったです。また、一般的にイギリスでは、古い建物の価格は高くなるという価値観の違いにも驚かされました。
地震がなく数百年も構造的に問題なく引き継いでいけるというバックグランドがありますが、古い物を大切にする文化にカルチャーショックを受け、帰国後は、構造的に堅剛な建築物を作り、引き継いでいけるような住宅を創りたいと思いました。変わることなく佇む重厚感があり、色褪せることのない建物とはイギリスやヨーロッパの建物のように飽きの来ないデザインで、その美しさを変えないことだと思います。
イギリスでは古い建物を大切に残しながら、住む人を変えながらも維持する文化がずっと息づいています。古い建物の窓を変え、玄関ドアを変え、キッチンを変え、現代的な建物に内装や設備を変えていく、そういう文化に驚いたのも忘れません。そこには無垢材だったり、石だったり、本物が使われ、本物を大切にし、日本のように張り物を使い、使い捨てし消費していくという日本の考え方とは、かなり違っていました。
エジンバラの家の簡単な間取りです。 南側のキッチンのテラスドアから階段を下りると畑ができるほどのバックヤードがありました。
左隣のロシアからの移民のおばあちゃんが農機具を貸してくれ野菜造りを教えてくれました。
右側の老夫婦は、庭のリンゴの木に実がたくさんなったからと言って、アップルパイや焼きリンゴ、ジャムを作ったらと籠いっぱいのリンゴを分けてくれました。お爺ちゃんはある朝バス停に向かって歩き出した私に「啓子どこに行くの?」と尋ねてきました。私はコミュニティーセンターのフリーの英語クラスに行くの」と答えると「英語なんか勉強せずにスコティッシュを習いなさい」と言ってきました。笑って返しましたが、かなりの本気モードでした。イギリスから独立したいスコットランドの人たちの思いをぶつけられました。
北側のカークヒルドライブ通りの道を挟んで反対側には、ロージーおばあちゃんが一人で住んでいましたが、時々お子さんやお孫さんたちが来て、パーティーを開いていました。彼女からもお茶に誘っていただいたりしましたが、ガレージのドアの塗装を、ご自身でされるのを見て、これも驚かされました。
大きなガレージのドア・オーバースライダーの前に脚立を立てて少しずつ塗っている様子をリビングの窓から見たときには、声も出ないほど驚きました。 お年寄りにそんなことをさせるなんて~と。でも、自分の家は自分で可愛がること、メンテナンスを自分でする気持ちを大切にしていることを知りましたが、一人暮らしのお年寄りが多いことにも気が付きました。年齢に関係なく独立した生活を営むことが当たり前でした。
ということで、帰国後は、私も作ったデッキの塗装や、腐った木材の交換作業を毎年11月の初めの連休に自分でしていました. 滞在中にご近所の方々からはアフタフーンティーにお誘いを受け、その文化も知りました。
自宅の前面道路のカークヒルドライブを北東に歩くと、ホリールードパークの南側にあるプレストンフィールドホテルという5ツ星ホテルがあり、庭にはゴルフコースがあり、ゲートから建物までかなり歩いてやっとエレガントな建物が見えてきます。お庭には、孔雀が離されていました。
このようなエレガントなデザインの建物は珍しく、妻側の立ち上がった曲線のパラペットは黒い金物で葺かれている歴史を感じる白亜の豪邸です。世界中からゴルフ好きの方々が訪れるホテルです。窓のデザインは、上げ下げで組子入りです。 窓の位置は縦・横のラインが揃っているので、時代を重ねても変わらない美しさがあると思います。 日本の住宅のように、間取り優先で立面的なデザインは考えなかったり、ただ単にご要望に応えたプランとなり、窓があっちこっちについていると統一感のある美しさは感じないですね。こういう建物は飽きがこない、存在感が変わらない美しさを感じます。
市街地中心の建物は、上の写真ようなの石積です。 フラットと言い一つの大きな建物に、ホテルの部屋のように階層や部屋が廊下や階段の左右に並んでいて購入したり賃貸で借りていたり、学生たちのシェアハウスになっていたりです。これは、ヨーロッパの国々やアメリカなどでも、一般的です。
写真の建物は、ザ・メドウズというエジンバラ最大の公園を囲んで、建ち並んでいますが、一階にはパブやカフェ、レストランがあり、赤や黒に外壁が塗られていることが多く、建物全体は自然な石の色合いのままです。 その形・素材は何百年も変わらずに建ち続けています。石積の堅剛さは、本物の石という素材の存在感が圧倒的にあり、普遍的で、圧巻です。
これらの建物の天井の高さは3.5mくらいはあったと思いますが、16,17世紀の豪商たちや、地主、政府役人、法律家が財を肥やした歴史が見えます。日本で16,17世紀の建物に住んでいる人は、一般人は現在いないと思います。子供達の友達が、フラットに住んでいましたが、暖房システムに問題があり冬は寒かったです。
最後に、思い出話を一つ。日本から友達が来て、エジンバラ城や、プリンスィズストリートに案内し、下の写真のカールトン・ヒルにも行きましたが、ホリールード宮殿の方から上りこの丘に立ち、パンテノンの柱を見た時に、全身に鳥肌が立ち友達に”私この丘に生まれる前に立ったことある!わ~デジャブだ!”と呟いていました。
そうなんです!ドレスの裾を冷たい風になびかせながら冷たい風が目に入り、涙をためながら立ちつくし、エディンバラ市街とホリールード宮殿やホリールードパークとなったアーサーズ・シートを見下ろしている自分を感じていました。不思議な感覚でした。
きっとスコットランドと前世で何か縁があったんだろうと今も思っています。あの時に感じた、強い風、冷たい風を今も感じます。
息子と時々思い出話をすることがありますが、そんな時何を思ってか、息子は”いつか戻らないとね”と話すことがあります。そんな時、私はいつも”うん、そうだね”と答えます。
コメント